内藤菫花 浦河体験記
はじめまして!
3月11日から約2週間ワーキングホリデーとして浦河町で就業していました。
兵庫県在住の大学2回生すみれです。
今回ワーホリ生として2週間浦河町で過ごした日常の体験記を綴ります。
今回はちょうど帰省していたので、地元の愛媛から北海道へ向かいました。朝3時に起きて意識が朦朧とする中での大移動で大変疲れていましたが、初めての北海道旅がとても楽しみでした。予定よりもかなり早く札幌に着いたので、ペガサス号の最終便の出発まで2時間待つ必要がありましたが、フレンドリーな道民の方々が話しかけてきて井戸端会議をしたので有意義な時間になりました。そうこうしている内に今回就業した「うらかわ優駿ビレッジAERU」に着き、フロントマネージャーの田村さんが施設を案内してくださいました。館内全体が清潔感のある空間で大変過ごしやすかったです。
~AERUでのお仕事~
最初の5日間はAERUでお仕事をしました。皆さん優しく温かい雰囲気の方々ばかりであっという間に緊張も解け、あっという間の2週間でした。就業する前に副社長に挨拶をしに行くとサービス業について色々なお話をして下さいました。アルバイトとして百貨店で働いている私にとって接客とは何か?について考える事のできる良い機会でした。マニュアル通りの接客ではなく一人一人のお客様のニーズを満たすことの出来る臨機応変な対応が大切だと改めて考えました。
AERUの客室の目玉はウィニングチケット等の名馬がコンセプトのお部屋です。部屋のソファーには名馬をイメージした可愛らしいぬいぐるみが置いてあったり、壁には名馬のポスターやスローガンなどが飾ってあったり、競馬・馬ファンにはたまらないお部屋でした。
競馬ファンなら一度は泊まる価値があると思います🐴
また、AERUには有名な厩舎があり、そこでは約20頭の引退馬がのんびり暮らしていてスズカフェニックスやナカヤマフェスタ等競馬とは無縁な私でも知っているような名馬がたくさんいました。馬の目はつぶらで優しい瞳をしていて、触ったら怒ったり気分を害したりするのではないかと思いましたが何の問題なく触らせてくれました。大きな犬のような感じがして犬好きの私にとっては親しみやすい印象を抱きました。
馬たちの部屋の前にはお守りが吊るされていて私は競馬ファンの方々が勝利祈願のためにお守りを吊るしているのかと思いましたが、そのようなファンの方々からのお守りも多いですが馬たちの健康祈願のために吊るしているファンの方々が多いそうです。馬たちがいかに人々から愛されているかを実感しました。
AERUの推しポイントなのですがAERUから厩舎に向かう道中には桜ロードと呼ばれている有名な桜の観光スポットがあって、晩春ごろエゾヤマザクラが咲きAERUを彩るそうです。実際にエゾヤマザクラが咲き誇る桜ロードをネットで調べてみると凄く素敵な写真がたくさん載っていたので是非一度そのシーズンにAERUに訪れてみたいです。
AERUでのお仕事はフロント業務や外部勤務、レストランのホールなど多岐にわたるお仕事を体験しました。フロントでのお仕事はたくさんのファンを抱えるAERUの大浴場のスタンプカードのスタンプ押しや館内のPOP作り等です。やはり常連のお客さんが多いため
フレンドリーに挨拶を交わしてくれる方々ばかりで緊張することなく接客することができました。たくさんのお客さんやAERUのスタッフさんが接客を褒めてくれたので大変嬉しかったです。AERUでのフロント業務はお風呂という日常的な慣習の元で接客を行うため長期的且つ深い関係性を築きやすいと感じました。そのような関係性をスタッフの方々一人一人が大切にしているからこそ遠方からの人々だけでなく地域の方々にも愛されるホテルなんだと実感しました。
POP作りでは乗馬用の標識やレストランで使われるPOPを作りました。ホテルの業務を経験したおかげでillustrator等のアプリを使う事の出来る良い機会にもなりました。浦河にはたくさん外国の方の方も訪問するため英語表記の標識も大切です。実際私もAERUで何度か海外のお客さんと英語でやり取りをしました。韓国の方や台湾の方がいて本場の英語が通じるかわからないため、いかに簡単な英語でコミュニケーションをとるかが大切でした。久々にプレッシャーを抱えながらの英語でのコミュニケーションだったのでとても緊張しましたが正確に予約を取ることが出来て安心しました。独特の英語で聞き取りにくかったですが相手のお客さんも丁寧に優しく会話をしてくれたので大変満足した接客となりました。やはり英語を使ってお仕事をするのは自分にとって大きなやりがいを得ることが出来ると感じました。今回英語標識を作ることになったのもある意味自分にとって運命的な出来事だと感じました。グローバル化が進む現代において標識の多言語化や英語標識が増加している中でオリジナルの英語標識を作ることは大変誇らしかったです。自分が作った現地のルールが則られた標識を海外の方々が目で見て理解し、構築される一種の異文化コミュニケーションに携わることが出来て光栄でした。
外部勤務では浦河町にある老舗の洋菓子店「手取 菓子舗」を始めとした様々な場所に連れて行ってくださいました。まず「手取 菓子舗」さんではAERUとのコラボ商品の企画についてお話をしました。「手取」さんは浦河で注目を浴びる今最も熱いお菓子屋さんです。人気メニューである「いちごのケーキ」が近々羽田空港で発売されるらしく、羽田空港で商品を販売できる事は相当レアなことであり、それを実現した「手取」さんは本当に素晴らしいです。
社長の坂井さんはとても気さくな方で、今回のAERUとの共同企画への様々な想いを教えて下さいました。元々、地域の人々やお店同士が結びついていなかった浦河町が町の連携を図るために地域内の繋がりを強くしようと意識し始めたのは最近のことらしく、直近の事業では「いちごフェア」というイベントが日高信用金庫さんによって考え出されました。
実は私も北海道を訪れるまで知らなかったのですが浦河町はいちごの生産量が全国的に多いらしく町内に苺農園がたくさんあるらしいです。農園を営むと必然的に廃棄される苺が発生するため、この廃棄される運命にある苺をどうにかできないかと日高信用金庫さんによって考え出されたのがこの「いちごのフェア」です。このフェアでは浦河町にある様々なお店で、廃棄される予定であった規格外の苺を使用してオリジナルの商品が開発されました。この「いちごのフェア」は大盛況だったらしく、この軌道に乗った状態で地域の連携事業に取り組みたいと語って下さいました。
今回「手取」さんとAERUが携わる合同企画は、AERUに宿泊するお客様に提供するウェルカムスイーツの開発です。今回開発されたウェルカムスイーツはAERUでしか購入できない完全オリジナルのスイーツです。パッケージにも力を入れているとおっしゃっていて、いかにインパクトのある周りに溶け込まないオリジナルの包装用紙で提供できるかがポイントだとおっしゃっていました。デザインを担当したのは浦河町在住のイラストレーターの方で箱の中に入っている栞にはこの商品が開発されるまでの過程が携わった方々の似顔絵付で同封されており、一つ一つの過程が大切に行われているからこそいかに商品に様々な想いがこもっているかが分かる商品だと思いました。
「手取」さんでの貴重なお話を通して、浦河町の現状を聞き、少子高齢化が進む現代でいかに地域内の連携が必要不可欠であるかを実感しました。また、この日初めて地方の銀行が地域に根づいた活動を積極的に行っていることを知り、銀行はお金の貸し借りをするだけでなく地域の町づくりにも貢献していることや、メガバンクではなく地方の銀行だからこそ出来る活動があるのだと学びました。帰り際坂井さんが「手取」さんの人気商品を5種プレゼントして下さいました。ありがとうございました!
他にも近々始まるAERUと浦河在住のヨガインストラクター神馬亮子さんのコラボ企画である「AERU de 朝YOGA」という企画のミーティングに参加させて頂いたり、浦河町の役場に寄って役員の方々に挨拶をしたりする機会もありました。役場内の標識にはヒンドゥー語が日本語・英語と共に載っていて、すごく多国籍だと感じました。馬産業が栄えている浦河ではインドからの労働者が多いためそのような標識がたくさんあるのだと教えてくれました。元々インドはイギリスの植民地であったためその影響で馬事文化が栄えていて、それに関する豊富で高レベルな技術を持っている若者が多く存在します。浦河では馬産業の人手不足が問題視されているので、その産業に携わるインドからの出稼ぎ労働者は大変ありがたい存在だそうです。
そして、AERUでの外勤の際に浦河町内を探索する時間が多くありました。普段大学で景観法や都市環境を学んでいるため北海道ではどのような規制が則られているのかが気になっていました。積雪を防ぐために三角屋根の家が多いということは知っていましたが浦河町の商店街では、ほとんどの建物が三角屋根であるという特徴の他にも建物の2階の壁に水平な線が施されていて統一感のある町、という印象を受けました。この三角屋根は日高山脈を象徴していて、2階の水平線は海の水平線を表しているそうです。地域の特徴的な地理の要素が住宅を作る際に、住宅の外観を左右していることを知り好奇心がくすぐられました。
外勤では毎度車の窓から見える美しい日高山脈に心打たれていました。アポイ岳だと教えていただき、カタカナなのはアイヌの方々の影響なんだと解釈しました。アポイがどういう意味を持っているのか気になって調べてみると「アぺ・オ・イ」というアイヌ語からきているらしくこれは火のある所という意味らしいです。昔、鹿の豊猟を願った人々が山頂に火を焚いて儀式を行った結果鹿が獲れるようになったという伝説からきているらしく、元々神話や昔の迷
信などに興味を持っているので大変面白く感じて他にも浦河や札幌など様々な北海道の地名の由来を調べました。
浦河滞在中は毎朝AERUのレストランコレッサで朝食を頂きました。コレッサでは「ななつぼし」をはじめとした特別栽培米や「ゆめぴりか」などの北海道産米を頂くことが出来ました。私の祖父も稲作をしていて米に関しても興味があるため特別栽培米や北海道産米をいただく事ができて嬉しかったです。その他の朝食メニューも毎朝充実していて、健康的な朝を迎える事ができました。毎朝ありがとうございました!
そしてAERUでは新しい出会いが多々ありました。実はホテルのスタッフさんにオーストラリアから来ているJAKEというスタッフがいると聞いていてぜひ話をしてほしいと言われていたため、久しぶりに英語を使ってコミュニケーションをとることにワクワクしていました。幼いころから英語を学ぶ環境で生活していたので英語を話すことに抵抗はないですが今回初めてJAKEとオーストラリアの政治について話した際に話の内容があまりわからなかったのでもっと英語の知識を深めたいという意欲にも繋がりました。また、JAKEに日本語の勉強を教える時間もあり日本人の私でもわからないような複雑な問題もあって大変苦労しましたが、お互いが学びたい言語の能力を高めようとする充実した時間でした。
浦河に滞在中、お休みの日は様々なことをしました。乗馬はもちろんドライブに連れて行ってもらったり買い物にも連れて行ってもらったりしましたが、一番楽しかったのはAERU敷地内を散歩することです👟普段からお休みの日は音楽を聞きながら近所の住宅街をひたすら歩くほど散歩が大好きな私にとってAERUの広大な敷地内を歩き回るのは大変充実した時間でした。散歩をしているとキツネやエゾシカに遭遇出来たり、木々と野生生物と私だけの空間を感じることが出来たり大変癒されました🍃また、散歩の時間帯によって様々な景色を堪能できたので毎回散歩するのが楽しかったです。
~Eyamでのお仕事~
浦河滞在中の後半の5日間はイタリアンレストラン「Eyam」で就業していました。「Eyam」という言葉はアイヌ語で「大切に」という意味らしいです。店主の小野里さんと小野里さんのお母様である百合子さんがお店を営んでいて、アットホーム且つおしゃれな雰囲気の素敵なレストランです。お2人とも本当に素敵な考えを持った方々で就業中は勉強になることをたくさん聞かせてくださいました。
Eyamの店内には大きくて広い窓が多数あり、開放的な空間で食事をすることができます。その窓から可愛い馬たちを見ながら食事をすることができるのも魅力ポイントで、運が良ければ仔馬も見ることができるため動物が好きな方は是非一度訪れてほしいです。
Eyamでのお仕事は厨房の掃除やお客さんへの料理の提供、バッシング、料理のお手伝いなど様々なことを体験しました。Eyamでは「カイちゃん」という高校生のアルバイトさんがいました。カイちゃんはEyamを支えるしっかり者の可愛い女の子です。就業中何度もカイちゃんの行動力や気配り・心配りに感動するほど、周りをよく見て行動できる良い子でした!
そのような素敵な方々たちによって営まれているEyamでのお仕事を通して考えたのは、地域の方々との連携です。実際に常連さんがたくさんいるという顧客とお店の関係性だけでなく、農家の方々や畜産農家の方々がEyamに材料を調達するという地域の繋がりも感じることができました。また店内では「いつもありがとうございます。」という言葉がよく飛び交っていたのでいかに地域の方々に愛されているかを感じ取ることもできました。
しかしそんなEyamで一番問題視されているのは、従業員不足です。アルバイトとしてEyamで働いているカイちゃんはあと1年で高校を卒業するため、ずっとEyamで働くことが不可能です。実際にカイちゃんがいない日中の時間帯に店主の2人と働いていると、混雑時は猫の手も借りたい程の忙しさで、2人でお店を回すのは難しいと実感しました。そのため小野里さんは今、QR式の注文方法を導入することを考えています。このシステムの導入によってスタッフの移動回数の軽減の他、料理の調達の円滑化など様々なメリットがあります。しかし高齢化が進む浦河でこの方法を導入するとなると高齢者の方々が注文の操作方法が分からない等の問題も懸念され、スタッフが直接お客さんの元で説明する必要性もあるので便利なのか不便なのかわからない、そのような事態が発生します。また高齢化する町内では若者がどんどん町外に出て行ってしまい、若いスタッフの確保がますます難しくなっていますし、このような事態に陥っている町は他の過疎地域にも多く見られると思います。今回Eyamさんで個人経営のお店の実態を聞いて将来このような方々の救いになれるような活動をしたい、という新たな意識形成も私自身の中で芽生えました。
最終日には3人からのプレゼントとして人気のドレッシングを2本頂きました🥬
皆さん本当にありがとうございました!
カイちゃん健康に気を付けてお勉強頑張って!✍
今回浦河町で2週間滞在する機会を頂いて新しい発見、出会い、感性だけでなく私自身の存在価値や将来設計など予測していなかった分野の気づきにも出会うことができました。ワーキングホリデーに参加する前は周囲からの反対もあって緊張や不安が強かったですが今は参加して本当に良かったと思っています。何事も挑戦してみることが人生において大切なんだと実感することができました。こう思うことができるのも出会って下さった方々皆さんが本当に温かく私を迎え入れてくれたからだと思います。浦河町が私にとって第二の故郷になりました。就活が終わったら次はもう少し長い期間滞在したいです!お世話になった皆さん本当にありがとうございました!!また会いに行きます!